院長コラム

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Doctor’s Column

不眠人口1000万人超!? 健康を守る「質の高い睡眠」をとる方法 2020/1/17

夜型のライフスタイル、過剰なストレスが影響

健康のために心身をしっかり休ませる「眠る本能」もまた、その眠らせてしまっている本能のひとつといえます。

夜、眠ろうとしても眠れない、眠ってもすぐに目覚めてしまう、そのため昼間は睡眠不足の状態で生活している――。睡眠欲という本能がきちんと満たされていない人の数は膨大といってもよく、一説によると、不眠人口は1,000万人を超えるともいわれています。データによれば、この数10年で日本人の睡眠時間は1時間も短くなっており、夜型のライフスタイルをとる人の数も増えています。

私たちの生活形態もむかしにくらべてずいぶんと夜型に移行しました。残業で夜遅く帰宅、食事をすませれば、もう日づけが変わっていることもめずらしくありません。労働形態も昼間寝て夜働くような昼夜逆転のケースが少なくない。加えて、不況の長期化、格差社会、将来への不安などストレス要因にも事欠かない。こんな「眠らない」環境が「眠れない」人びとを量産しています。

いうまでもなく睡眠は健康の基本です。睡眠不足が頭痛や疲労感、倦怠感やイライラのもとになり、胃腸の働きの低下や便秘の要因ともなる。そんな経験のある方も少なくないでしょう。とくに最近では、睡眠とストレス・うつ病などの精神疾患、あるいは生活習慣病との関連もあきらかになってきているほか、慢性的な不眠は冠動脈疾患や脳血管障害、ガンなどの原因となることがわかっています。

そういった事実からも、いかに質の高い睡眠をとるかが健康には欠かせません。しかし、すでに述べたとおり夜更かしをしてしまったり、なかなか寝つけないといった人が多いのも事実です。そこで、ここからはいかにして質の高い睡眠をとるか、つまり睡眠本能をいかに満たしていくかをご説明します。

よい眠りを得るには、睡眠の「入口・出口」両方向の工夫が大切

よい眠りを得るための必要条件には大きく分けて2種類あります。眠りに入るときの入眠環境と眠りから覚めるときの起床環境です。つまり睡眠の入口と出口の両方向からの工夫が大切なのです。

まず、入眠環境ですが、その必要条件は主として暗い環境、体温の低下、ストレスの緩和、適度の疲労などです。最初の暗い環境ですが、外が明るいのは仕方ないとしても室内環境を整えることは個人でも可能でしょう。とりわけ消灯下のテレビが放つ光刺激は脳を覚醒させてしまい、眠りの質をそこねる元凶となってしまいます。

そこで私は、寝つきの時間にテレビを見ることよりもラジオを聴くことをすすめています。1時間くらいのタイマーをセットして、ごく小さな音量で睡眠薬代わりにラジオを聴くともなく聴くのです。あるいは、やはり小さな音量で静かな音楽を流すのもいいでしょう。私自身で試して大きな効果があったのは「むずかしい内容のCDを聴く」ことでした。

私が選んだのは『古事記』でした。ある学者がした『古事記』に関する講演を録音したCDで、その難解さと興味のなさから、何度聴いても10分もしないうちに眠りに落ちることができたのです。そのため古事記については、私はその序盤の内容にはくわしいのですが、中盤以降の知識になるとほぼゼロという状態がいまだにつづいています。

枕元での読書を睡眠薬代わりに、というのもひとつの手ですが、活字を読むには灯りが必要で、それがやはり視神経や脳を刺激してしまい、睡眠本能のさまたげとなってしまいます。眠りの入口をすんなり通過するには、視覚からの刺激はできるだけ避け、聴覚をリラックスした状態にするのがより効果的なのです。

また、体温が下がると人間は自然と眠気をもよおしますが、その自然な低体温状態をつくり出すには就寝前の入浴が効果的です。お風呂に入ったことで上昇した体温がひんやりとした布団に入ることで下がる。それが眠気を誘うのです。

 

※本コラムは、『健康はあなたの体が知っている』(サンマーク出版)を一部抜粋・編集したものです。

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎