院長コラム

院長コラム
Doctor’s Column

母乳や輸血で感染…「成人T細胞白血病」を知っていますか? 2020/1/28

ウイルス感染が原因で引き起こされる白血病がある

一般にはあまり知られていませんが、血液のがんといわれる白血病の中には、ウイルス感染が原因のものがあります。

私の出身地である九州エリアは、成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルス(HTLV‐1)に感染する頻度が高く、福岡県ではキャリア(ウイルスを所持していながらも発症していない人)が8%にも達する(※日沼頼夫(1998)「ウイルスから日本人の起源を探る」『日本農村医学会誌』(1997-1998),46(6),908-911)という調査があります。このうち、成人になって5~8%の人が難治性のATLを発症して死に至っています。

年間の患者数が500~700人程度ということもあって研究する人は少なく、いまだに有効な治療法が見つかっていないのが現状です。そのため、「HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)に関する情報」(厚生労働省)では、キャリアが発生しないように対策を立て、感染予防に努めています。

ATLのウイルスは、ほとんどの場合で母乳と輸血によって感染しています。私の場合は、乳離れがなかなかできず、母乳を吸い続けていたことで母から感染したキャリアです。それを知ったのは、35歳のときでした。

私が医大を卒業した1985年頃は、まだATLに関する認識が医学界でも甘かったため、キャリアが献血をしていた可能性もありました。日本赤十字社が献血で得た血液をすべてチェックするようになり、ATLのウイルスに感染した血液がはじかれるようになったのは、翌年の1986年からです。その後、抗体検査で感染を調べられるようになり、九州出身ということもあって受けた血液検査で、キャリアであることが判明したのです。

そのときは、5~8%の低さとはいっても、発症したらほとんどの場合で死亡する病気ですから、当然、エイズウイルスに感染したと言われたのと同じくらいのショックを受けたのを覚えています。

ところが2019年の5月、91歳になる母の血液検査を行った際、母子感染であることを確認しようと思い立ち、私も25年ぶりに抗体検査を行うと、ウイルス抗体もウイルスDNAも陰性化していたことが判明したのです。これは間違いだと思って再検査をしましたが、やはり陰性という結果。もちろん母は陽性でしたが発症はしていません。

なぜキャリアであり、抗体反応も陽性だった私が陰性になったのでしょう。

3年間ビタミンCを服用していたら白血病ウイルスが消えた!?

この10年ほど、私は健康に関するさまざまな実験や検査を繰り返してきました。その一環として、がんを抑制する効果があるといわれている高濃度ビタミンC点滴療法にも興味があり、経口摂取でも同じ効果を得られるのかを試してみたいと思っていました。しかし、がんではない私の体では実験になりません。

それでも、免疫力が高まるなど何らかの健康効果は得られるのではないかと考え、子どもの頃を思い出して検証するために、この3年間ビタミンCを大量に飲み続けてきたのです。最初は1日2~6g、その後は10~15gに増量して飲んでいました。厚生労働省が推奨しているビタミンCの摂取量は、私の年齢で1日100㎎ですから、かなり多いといえます。

ビタミンCは体に必要な量だけが取り込まれ、残りは排泄される性質のため、血液中の濃度を測って確認することは難しいのです。それでも、おそらく免疫機能を活性化してATLのウイルスを消すことにつながったのではないか、と私は考えています。

「九州エリアで育った母」と「九州以外のエリアで育った父」を持つ人は検査を

この話をすると、ほとんどの人が驚きはするものの、自分には関係がないという反応を示します。けれども、例えば九州出身のキャリアの母親が東京で暮らしていて、知り合った東京の男性と結婚していたら、生まれた子どもはキャリアかもしれないのです。

しかも、九州エリアで生まれ育ったキャリアの場合は、陽性率は高いですがウイルスに対する耐性ができているらしく、発症率は比較的低くて安全とされています。つまり、キャリアのままで終えるケースが多いのです。これに対して出身地が九州エリア以外の男性との間に生まれてキャリアになった場合は、耐性がないために発症しやすいと考えられています。

ATLのウイルスの発症率は低くても「陽性」は危険です。キャリアの母親の母乳で育った人は、念のため一度調べてみるとよいでしょう。

 

※本コラムは、『健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎出版)を一部抜粋・編集したものです。

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎