院長コラム

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Doctor’s Column

手遅れになる前に…がんの超早期発見が可能な血液検査とは 2020/4/28

がんのなかでも上位を占める「消化器がん」

数あるがんのなかでも、とくに消化器がんは高齢者を中心に発症数が多いがんです。胃がんや大腸がんは、男女ともに上位を占めています。

【胃がん】

胃壁の上皮(最も内側の粘膜)の細胞ががん化しできる悪性腫瘍です。最新の部位別発症数データ(2016年)では、男性で1位、女性で3位 と、非常に多いがんです。

【大腸がん】

大腸は全長約1.8mの消化管で、大きく結腸と直腸に分けられます。これらと、肛門に発生したがんを総称して大腸がんと呼びます。厚労省の発症者のデータ(2016年)では、男性では胃がん、肺がんに次いで3番目、女性では乳がんに次いで2番目、男女合わせると1位に なっています。これらのがんは死亡数も多く、一見怖いがんだと思われがちですが、早期に発見すれば5年生存率は9割を超え※、決して怖いがんではありません。

※Ⅰ期の5年相対生存率は胃がんで 94.7%、大腸がんで95.1%(がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計 2010-2011年より )

早期発見が困難な消化器がんも

しかし、消化器がんのなかには、非常に早期発見しにくいがんもあります。その代表格がすい臓がんと胆道がんです。

【すい臓がん】

すい臓は、胃の裏側に位置する20㎝ほどの横に細長い臓器です。すい臓周辺には血管や神経が集中しており、肝臓等の重要な臓器も近くにあります。そのため早期発見が困難なうえ、すぐに周囲の組織や、近くのリンパ節へ浸潤・転移してしまうことが多いのが特徴です。消化器がんのなかでも悪性度が高く、予後不良のがんとされています。

【胆道がん】

胆道とは、肝臓でつくられる消化液のひとつである胆汁の通り道です。胆道の近くには冠動脈や門脈といった重要な血管および肝臓や膵臓などの臓器があるため、がんがそれほど進行していなくてもできた場所等によっては手術ができない場合があり、難治性のがんとされています。また、手術を行っても約6~7割と再発が多いのも胆道がんの特徴です。

これらは、胃がんや大腸がんと比べ発症率は低いのですが、発見されたときには相当進行しているケースが多いため、予後の悪いがんとして知られています。

がん検診の有効性と限界

早期発見には、定期的ながん検診を受けることが大切だといわれています。消化器がんにおいて、国が推奨し自治体や職場等で行われているがん検診(対策型検診)は次の通りです。

胃がん:問診と胃部X線検査、または内視鏡検査

胃部X線検査では、バリウムをのんで体の向きを変えながらX線撮影をし、バリウムの流れや食道・胃の動きを観察します。内視鏡検査は口または鼻から胃カメラを入れ、胃の内壁を観察します。それぞれ画像で異常を発見できますが、それだけではがんかほかの病気かの判断はできず、組織を採取し調べる必要があります。またX線検査の場合被ばくがあることや、小さな病変や平らな病変の発見には不向きというデメリットがあります。

大腸がん:問診と便潜血検査

検査専用のキットを使って採便後、医療機関へ提出。潜血(便に血液が混ざっているかどうか)を調べます。便潜血検査には化学法と免疫法という2つの手法がありますが、国内で広く行われているのは、ヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて潜血の有無を検出する免疫法です。安価で体に負担がかからない検査ですが、腫瘍以外からの出血も陽性となる(擬陽性)、陰性であってもがんがないとはいい切れないといった限界があります。

このように、一般的ながん検診は、がんによる死亡率の減少に有効とされながらも、擬陽性が多かったり、画像ではっきり映らず見逃しの可能性があったりといった限界もあります。

また、消化器がんのなかでも難治性とされるすい臓がんや胆道がんには、いまのところ国が推奨する対策型検診はなく、人間ドックなどの任意の検査でたまたま見つかったり、腹痛や黄疸などのなんらかの症状が出てから受診してはじめてがんと診断されるケースが多々あります。しかし、その段階ではすでに進行しているケースが多く、打つ手が限られてしまうのが実情です。

少量の血液で超早期発見…カギは「mRNA」

そこでいま注目されているのが、血液でがんの超早期発見を可能にした新しい検査法です。

血液ががん細胞に反応してつくりだす遺伝物質「mRNA」を調べることで、がんの有無がわかるというものです。

がん細胞が発生すると、人体にもともと備わっている免疫機能が働き、がん細胞を異物とみなし反応が起こります。このとき血液中に、特有の遺伝物質「mRNA」があらわれるのです。この遺伝物質を血液から分離し、マイクロアレイと呼ばれる専用のキットにのせて反応させると、mRNAの構成パターンを解析することができます。がんが発生していると、健康な人とは違う構成パターンがあらわれるため、がんの有無がわかるというわけです。

画像検査で見つけられる大きさよりも、もっと小さな病変のうちにがんの判定が可能になる、すなわち「がんの超早期発見」が可能であるというのが、もっとも大きな特徴です。少量の採血ですむので、体への負担も少ないといえます。

擬陽性や偽陰性も極めて少なく、9割の正確さを持ちます。現在、胃がん、大腸がん、すい臓がん、胆道がんの4種類の消化器がんの判定が可能になっています。とくに、すい臓がんや胆道がんのような早期発見がむずかしいとされているがんにたいして、このような検査法の登場は朗報といえるのではないでしょうか。当院でも実施しておりますので、興味のある方はお問い合わせください。

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎