院長コラム

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Doctor’s Column

④「豊かな栄養」「病気へのケア」で生命力を活性化する方法 2020/4/26

「本能の力を引き出す」方法

前掲のコラム『「芸術・自然」への親しみと「リラックス」で生命力を活性化する方法』に引き続き、本能の全体的な活性法として以下の10の方法について説明します。

①生活のリズムを整える
②空腹を感じる生活をする
③適度な禁欲を心がける
④適度な運動を実践する
⑤沈思黙考の時間をつくる
⑥芸術を鑑賞する
⑦大自然の中に入る
⑧リラックスできる環境をつくる
⑨食事(栄養)を見直す
⑩病気を治療する

ここでは、「⑨食事(栄養)を見直す」「⑩病気を治療する」について解説します。

⑨食事(栄養)を見直す…ポイントは「朝は軽め、夜はゆっくりたっぷり」

朝は軽め、夜にゆっくりたっぷり。本能を活性化するためには、そうした食事法で空腹を感じる生活をしろと述べましたが、世間ではこの逆の方法を説く人もいます。1日の活動を充実したものにするために朝はしっかり食べて、夜は軽くすませようというやり方です。しかし、この方法では人間の活動を身体的にも精神的にも鈍らせてしまうことが多いようです。

一般には、人間のもっとも旺盛な活動時間帯は午前から午後にかけてですから、その時間帯にたっぷり食事をすると、生体機能の働きが消化活動に多く振り向けられてしまい、頭の活動や行動は鈍化してしまいます。成長期の子どもはべつにしても、成人であれば、やはり活動時間帯の食事は軽いものですませ、休息の時間帯にリラックスして食べるという方法が本能的にも理にかなっています。

朝中心から夜中心に食生活を変えると、最初の2~3週間は空腹がつらく感じられるかもしれません。ダイエットを始めた当初の私もそうでした。活動時間帯の摂取カロリーが少ないと、いつもお腹が空いている感覚に悩まされるのです。しかし、食欲や消化機能というのは意外なくらい習慣性の強いもので、遅くとも2~3ヵ月すれば、その空腹にも慣れてきます。

慣れてくると同時に心も体も軽く感じられるようになり、非常に活性化された感覚を味わうことができるでしょう。眠っていた健康への本能が体のあちこちで目覚めたような爽快感を覚えるのです。つまり、空腹を感じる生活を実現する食事法については、その効果を短期間に求めないことが大切なのです。

また、栄養面に関する見直しのアドバイスをひとつだけしておくと、現代人の食生活は総じてタンパク質の摂取が多すぎます。タンパク質は脂肪と並ぶごちそうですが、脂肪の摂りすぎの害はよくいわれても、タンパク質の摂りすぎの害はあまり指摘されません。それどころか、「低カロリー、高タンパクの食事が健康にいい」などといわれて、必要以上にたくさん食べている人が多いようです。

けれども、高タンパクの食事はそもそも体にあまりいい影響を与えません。高タンパク、高栄養の食事はやはり体内に老廃物を増やして血管を傷めるのです。その結果、とくに腎臓への負担が大きくなる。タンパク質の過剰摂取は腎臓を傷めます。また、世界の長寿村といわれる地域ではたいていタンパク質の摂取量が少なく、週に1回くらいしか摂らないケースがめずらしくありません。長生きにとっても、タンパク質の過剰摂取は弊害になるのです。

もちろん、タンパク質は脂肪、炭水化物と並ぶ3大栄養素のひとつで、血液や筋肉をはじめ体のさまざまな組織をつくるうえで欠かせない重要な成分であるのはまちがいありません。でも、その摂りすぎは今述べたような害につながるし、現代人の食生活はどう見ても高タンパクに傾きすぎといえます。

健康的なタンパク質の摂取量の目安は「体重1キロに対して1グラム」です。体重が60キロの人なら1日60グラム程度摂れば必要摂取量としては十分なのです。

肉は種類にもよりますが、その4~5分の1くらいの重量がタンパク質で占められていることが多いので、150グラムの肉を買えば30~40グラムがタンパク質です。体重50キロの人なら、その肉1枚ですでに摂取リミットに迫ってしまう。そう考えると、私たちの食生活が高タンパクすぎるという指摘がけっしてオーバーでないことは納得いただけるでしょう。

また、肉や魚にふくまれる動物性タンパク質よりも、豆などに含まれる植物性タンパク質のほうが健康にいいという説が根強くありますが、これもなかば神話のたぐいといえます。豆は肉より脂肪分が少ないので、その点では植物性タンパク質に軍配が上がりますが、アミノ酸の含有から見ると植物性より動物性のほうがすぐれています。動物性のほうが良質なアミノ酸がそろっているのです。

ただ、同じ動物性でも肉より魚のほうが含まれる脂肪が良質です。だから、タンパク質は魚中心で摂るのがベスト(イワシ、サバ、サンマなどの青魚ならなおいい)。魚料理を主体にしてときどき肉料理を食べる。魚を食べた日は納豆を食べなくていい――そんなふうに、タンパク質にまつわる食常識を見直すことをおすすめします。

⑩病気を治療する…面倒だから?怖いから?問題から目をそらしてはダメ!

病気になったらちゃんと治す。治る病気はきちんと治しておく――これも本能の力を高めるうえでとても大切なことです。そんなのは当たりまえのことじゃないかと思うかもしれませんが、その当たりまえをなかなかしない、できていない人が世の中には意外なほど多いのです。

たとえば医者が高血圧を指摘すると、「私は病院に来ると血圧が上がる白衣高血圧なんです。ふだんは正常ですから、だいじょうぶです」などといって薬や治療を拒否する人がいます。では、自分で血圧計を買って家でちゃんと測っているかというと、これがそうでもないのです。週にいっぺんくらい測定し、その中のいちばん低い値だけに着目して、「境界値以下だから安心――」。そんな適当なやり方で病気や病気の芽を放置したままにしている。

もっと猛者になると、「肺に影がある。肺ガンの疑いもありますから再検査を受けてください」といわれながら1年も放っておく人もいます。内心では心配なのでしょうが、病気であることを認めるのが怖いのかもしれません。こうなるともう笑い話ではすみません。

病気を直視するのが怖くて治療からも逃げているうちに、病状が進行している危険性が高まるからです。だれにとっても病気は嫌なものであり怖いものですが、だからといって放っておいたのでは、さらに怖い結果を招きかねません。病気になったら、無視したり逃げたりせず正面から受け止めて、しかるべき治療を受ける努力をしなくてはならない。その手助けのために、医者という存在があるのですから。

また、やはり病気に対する恐怖心が根底にあるケースで、まったく病気でもないのに、「先生、私は○○病じゃないでしょうか。本当のことをいってください」などと先回りして心配ばかりしている人もいます。「だいじょうぶです。余計な心配はご無用ですよ」といっても、首をひねりながら疑心暗鬼の表情を崩さない。「いまはだいじょうぶでも、やがて病気になるんじゃないでしょうか。親も同じ病気をしているし」などとなおさらしなくていい心配で心をいっぱいにしてしまう。

病気のない病人みたいなもので、ヘタをすると、そうした不安な気持ちのありようが本当に病気を呼び寄せてしまうことにもなりかねません。こういう人も健康で幸せな人生を送ることはなかなかむずかしいものです。ならないうちから病気になる心配をしてもデメリットしか生じません。「病気ではないか」「病気になったらどうしよう」。そんなあいまいな憶測や感情、気分をもとにしていては病気との正確な距離は測れないのです。

だから、私たちが病気に関してすべきことはつぎのようなことだけです。

病気が怖いのなら、心配の先回りよりも、病気にならないようできるだけの予防策を講じておくこと。それでも、もし病気になってしまったら、やはり必要以上の不安にとらわれることなく可能なかぎり治療に専念すること。治す努力をすれば、治る病気はかならず治るのですから、それ以上のことやそれ以外のことに気をとられるのはさしあたって不要です。病気とは感情的にではなく科学的(論理的)につきあうことが大切なのです。

健康であるときは健康に感謝して精一杯生きる。病気になったら病気を治すべく精一杯治療をする。そんなメリハリある健康観、病気観があなたの本能の力を高め、生命力をも高めてくれるのです。

※本コラムは、『健康はあなたの体が知っている』(サンマーク出版)を一部抜粋・編集したものです。

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎