院長コラム

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Doctor’s Column

②適度な「禁欲・運動」と「沈黙思考」の習慣で生命力を活性化する方法 2020/4/24

前掲のコラム『「生活リズムの調整」と「空腹の体感」で生命力を活性化する方法』に引き続き、本能の全体的な活性法として以下の10の方法について説明します。

①生活のリズムを整える
②空腹を感じる生活をする
③適度な禁欲を心がける
④適度な運動を実践する
⑤沈思黙考の時間をつくる
⑥芸術を鑑賞する
⑦大自然の中に入る
⑧リラックスできる環境をつくる
⑨食事(栄養)を見直す
⑩病気を治療する

ここでは、「③適度な禁欲を心がける」「④適度な運動を実践する」「⑤沈思黙考の時間をつくる」について解説します。

③適度な禁欲を心がける…一定のリズム・周期にもとづくのが健康的

過ぎたるはおよばざるがごとしで、本能の過剰な発動は本能を無理に抑えること以上の害を私たちにもたらす場合があります。そのため食欲や性欲といった動物的な本能ほど「人間的」にコントロールする必要が出てきます。とりわけ、セックスの快感に関係する体内ホルモンにはより強い刺激を求めたくなる「増幅性」があり、度を越えた性欲への関心や追求が他の事柄への興味や意欲、感動を減退させてしまうこともけっしてめずらしくありません。

これを逆にいえば、多くの本能を活発に働かせて健全な生命活動を維持するためには性欲の適度な抑制が必要になってくる、というわけです。

その「適度な抑制期間」として、どの程度を想定すればいいのか。それを考えるときのひとつの目安に女性の月経のリズムをベースにする方法があります。人によって差はありますが、女性の月経周期は28日くらい。月経期間は5~7日くらいといわれています。また、月経前の女性は心身ともに変調をきたしやすいものです。

したがって、月経開始前の1週間程度と月経期間中の5日~1週間程度、合計10日~2週間くらいは性行為を控えるのが女性の体の健康にとっては好ましい。男性もこれにおつきあいして10日くらいの禁欲期間を設けるのが生理的にも自然であり、体の理にかなっているのです。むろん、この数字にも個人差や年齢差がありますが、セックスもまたある一定のリズムや周期にもとづいて行うのが健康のためにいいし、本能の活性化にも役立つということです。

④適度な運動を実践…筋トレとウォーキングを組み合わせる

このことについてもくり返し述べてきました。無理をせず、日常生活の中で行える運動を習慣づけることで運動本能が満たされ、肥満や高血圧の防止に役立つ、心臓の拍動機能をサポートして循環本能を向上させるといった効果があります。

ここではダイエット面における運動効果について考えることにしますが、「やせる」「太らない」ためには基礎代謝量の維持、向上が必要になってきます。基礎代謝とは生命活動を維持するために最低限必要なエネルギー量のことで、成人男性で1日1,600キロカロリー、成人女性で1,200キロカロリーのエネルギーが必要とされています。1日、ただじっと寝ているだけでも、これだけのエネルギーを消費するのです。

したがって、これ以上のカロリーを摂取した場合、なんの運動もしなければ、基礎代謝を上回った分だけ太ってしまうことになります。ダイエットをしたければ、食事制限によって摂取カロリーを基礎代謝量以下に抑えるか、運動して基礎代謝の数値を上げるか、その両方を併用するか。いずれかの方法を選択しなくてはいけないわけです。

でも、基礎代謝量を下回るような食事制限は現実的にはむずかしいし、健康にもよくありません。そこでダイエットには適度な運動がもっとも効果的になってくるのですが、運動には大きく無酸素運動と有酸素運動があります。

筋力トレーニングは無酸素運動で、無酸素運動が直接エネルギーを消費させる効率は低いです。しかし、エネルギーの最大の消費場所である筋肉の量を増やす効果がありますから、それが基礎代謝の向上につながってエネルギーの消費効率を上昇させるのです。

また、有酸素運動も基礎代謝のアップに効果があります。その代表例がウォーキングで、歩くことは心肺機能を高めて基礎代謝を向上させます。また、リズミカルに呼吸しながら歩くことで体内に酸素を取り込むと体脂肪が分解され、それが筋肉へ運ばれてエネルギーとして使われます。やはりエネルギーの効率よい消費に役立ちます。

無酸素運動である筋力トレーニング、有酸素運動であるウォーキング。この2本立ての運動を無理のない範囲で継続すれば、本能の活性化に大いに寄与することはまちがいありません。

運動にはまた、ストレス解消や知性・理性の働きを刺激する効果もあります。企業の中にも、幹部会議を皇居の周囲を歩きながら行うというところも出てきたようです。歩くことが脳のしかるべき部分を刺激して自由な発想やひらめきを生む。その効果に着目してのことでしょう。

カントや西田幾多郎といった哲学者の哲学的思考にも「散歩」がつきものでした。考える人は歩く人でもあって、歩行と思考の間には脳を介在した深い相関関係があるようです。つまり、理性本能を十分に働かせるためにもウォーキングや筋力トレーニングなどの運動は大切な要素となってくるのです。

⑤沈思黙考の時間をもつ…「考える習慣」で問題解決能力を高めよう

沈思黙考などというとちょっと大げさですが、1日に5~10分程度でいいから、静かな部屋で、1人だまって考える。そんな時間をもつことも理性本能や創造本能を活性化するためにとても大切になってきます。あることについて深く考えを掘り下げる。さまざまな事柄について思いをめぐらす。日々の生活の中で短い時間ながら、こうした習慣をもっている人は仕事にかぎらず、人生全般における秀でた問題解決能力を有しているものです。

頭のいい人、能力のある人とはつまり、考える習慣を身につけている人なのです。考える習慣がなく、視野や思考が目先の範囲を出ない人の人生は「その日暮らし」になってしまう――私はそんな実感をもっています。

だから、1日少しの時間でかまいませんから、1人静かに考える習慣を身につけたいものです。1日のうちの決まった時間に、その機会をつくれば、それが結節点となって生活のリズムを整えることにも通じます。歩くことも考える力を養うのに役立つのですが、歩行中の思考は体のリズムをともなうせいか、新しい発想やアイデアを生むのに効果があります。

それに対して、じっと座って考える沈思黙考は「新しさ」よりも「深さ」をうながすようです。ひとつのことを掘り下げる深い思考、さまざまな視点からの広く多様な思考、ずっと先のことまで思いを致す長い思考。時間や空間の制限を受けない自由な思考など。そうした「根っこの思考」に沈思黙考は向いているのです。

※本コラムは、『健康はあなたの体が知っている』(サンマーク出版)を一部抜粋・編集したものです。

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎