院長コラム

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Doctor’s Column

人間を攻撃的にする、現代の「悪しき食行動」 2020/4/27

攻撃性を抑えられない人が増えている!?

大脳皮質を発達させた人間は「考える葦」であり、知性や理性といった上位の本能で下位の本能をコントロールする能力をもっています。食欲や性欲などの動物的本能のおもむくままに生きるのではなく、それらを理性的に統御します。理性本能を優位に働かせることが、人間の人間たるゆえんといえます。

ところが、その理性本能が衰えているか、眠らせている人が増えています。「ムカつく」という理由だけで自分の感情や欲望をコントロールできず、暴力や犯罪に走ってしまう。攻撃性を抑えられない人が少なくないのです。キレやすいのは若者だけでなく、年配の人でも駅員をなぐったり、店員を怒鳴りつけたりするケースが多いようです。いずれにせよ、自分の中の攻撃的衝動を抑制する理性の力が弱っているといえましょう。

その攻撃的衝動は生理的には交感神経の緊張から引き起こされます。交感神経は興奮や怒りをもたらす攻撃型の神経系だからです。

衝動的な行動のウラにある「血糖値の急激な変動」

では、その交感神経系が作動するのはどういうときなのでしょうか。その要因のひとつが血糖値の急激な変動です。

たとえば、糖分の多い食事を短い時間でお腹いっぱいにつめ込むと、血糖値が急激に上昇します。それを処理するために血糖抑制ホルモンであるインスリンがすい臓から大量に放出されて、急上昇した血糖値を急いで抑えにかかります。その結果、血糖値は短時間のうちにジェットコースターみたいに激しく上下するわけですが、その急激な変動が交感神経を刺激する原因となるのです。

とくにインスリンが大量放出されて血糖値を急降下させるとき、一種の低血糖状態が生まれて、それが交感神経を強く緊張させます。交感神経が緊張すると、人は情緒不安定になります。興奮しやすく、また怒りっぽくもなって、他人に対する攻撃的衝動を抑えるのがむずかしくなる。ちょっとしたことにムカついて、すぐにキレてしまうわけです。

ですから、カロリー過多の食事や早食い、過食といった現代にきわめて多い食行動は、理性本能の働きを弱めて人のもつ攻撃性を刺激してしまう、悪しき食習慣といえるのです。

まずは「食事の摂り方」に気をつけて

このことから、理性本能を高める方法もわかってくるでしょう。まず、食事の摂り方に気をつけること。ドカ食いや早食いをあらためて、ゆっくり、よく噛みながら食事をするよう心がけることです。また、食材にも注意が必要です。たとえば糖分を摂取するにしても、血糖値の上昇がおだやかなものとそうでないものがあることを知っておくべきです。

糖分(炭水化物)は大きく多糖類と単糖類の2つに分けられます。単糖類は果物や砂糖やキャンディなどに含まれ、多糖類は米やジャガイモ、そばやうどん、パスタや、豆類などに含まれています。単糖類が体への消化吸収が非常に早く、血糖値を上げやすい成分である一方、多糖類は比較的ゆっくり消化吸収が行われます。多糖類は単糖類が鎖状につながった形状をしているため、まず、その鎖を切り離してからでないと吸収できません。その分、吸収に手間がかかって血糖値の上昇が遅くなり、インスリンの分泌も少なくてすむのです。

むろん、多糖類も一度にたくさん食べたり早食いしたりすると血糖値を急上昇させてしまいますから、ここでもやはり、ゆっくりと時間をかけて食事をすることが大切になってきます。

また、理性本能を高める精神的なノウハウとしては、思い込みにとらわれたり、ひとつの考えだけに凝り固まらない柔軟な思考を心がけることが必要です。ひとつのものごとに集中して当たるのは大切なことですが、それに専心しすぎると、全体の動きや流れが見えなくなってきます。対象を「虫の目」でこまかく見てばかりいると全体図を俯瞰する「鳥の目」がもてなくなるのです。すると視野狭窄に陥って、思考の幅も狭まり、正確な判断もできにくくなってしまう。また、いたずらに感情的になって、理性や論理の働く余地がどんどん小さくなってしまう。

そうならないためには、ものごとをいろんな角度からながめて、その是非を絶えず客観的に検討し、修正していく。そうした「冷静な複眼」をそなえるよう努めることが理性本能の強化にとって重要なのです。

どれほど腹が立っても「25分間」辛抱してみる

攻撃性と交感神経の関係について、もうひとつ覚えておいてほしいのは、交感神経の強い緊張は長くても25分くらいしかつづかないという点です。交感神経が緊張するとアドレナリンが分泌されますが、その効き目は長い場合でも、だいたい25分くらいで切れてしまうのです。

緊張度が低い場合はもっと長もちしますが、極度の緊張ではアドレナリンの放出がそのくらいの時間でいったん枯渇してしまう。過度の緊張は体にとって大きな負担ですから、一定時間を過ぎると緊張のスイッチが自然にオフになるようにできているのでしょう。

25分というのは私の経験値から割り出した数字です。以前、私は患者さんの診療時間について統計をとってみたことがあるのです。その平均はだいたい6~7分でしたが、なかには文句やクレーム、不満や怒りをぶつけてくる患者さんもいます。その場合の所要時間が、最長でもおよそ25分だったのです。

だから、相手が激しい興奮状態や怒りを示しているときは、無理になだめたり説得しようとしても、25分以内だとかえって火に油を注ぐ結果になりかねません。25分が経過して、相手の緊張や興奮がおさまってから事態の収拾に乗り出したほうが効果的なのです。

これは自分の興奮状態や怒りについてもいえます。ひどく腹が立ったり、相手を強く攻撃したくなったときは25分間を目安にがまんしてみてください。すると、たいていの怒りはおさまって理性的に対処できるはずです。

※本コラムは、『健康はあなたの体が知っている』(サンマーク出版)を一部抜粋・編集したものです。

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎