院長コラム

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Doctor’s Column

「運動した後は血圧が上がる」は本当か? 2020/3/28

「走って来たので、血圧が高いんです!」という患者さんがいるけれど…

患者さんはよく「今走って来たので血圧が高いんです」と、汗を拭きながら言います。これは日常茶飯事で、運動すると興奮しているので交感神経が優位な状態になり、運動後の血圧は上がっていると多くの人が信じています。これは運動する人たちの常識になっているのではないでしょうか。

そこで、本当に運動後は血圧が上がっているのか、1時間ほどランニングをして、その前後の血圧を測定してみることにしました。

すると、実際には走る前よりも血圧は下がっていたのです。ランニングのたびに測定していましたが、毎回血圧は下がっていました。10㎞前後は走っていたのに、どうして血圧が下がっているのでしょう。

運動を中止しても、拡張した血管はすぐには元に戻らない

運動すると興奮状態になって交感神経は優位になるので、心拍数は増え、心臓からは血圧を維持するために必要な血液が送り出されます。運動を中止すると、心拍数は減り始めますが、運動中にはたくさんの血液が筋肉に流れていくので、血管は拡張している状態です。これは、運動を中止したからといって、すぐには筋肉内の血管が収縮するわけではなく、しばらくは拡張した状態が続くからです。

つまり、運動を中止して心拍出量は減少しても、血管は拡張したままなので血流が良くなっており、血圧は低下するというわけです。この血圧の低下が大きいときは、失神することもあります。これを「運動後低血圧」といいます。

お正月に開催される箱根駅伝を見ていると、走ってきたランナーがタスキをつなぐと倒れ込み、スタッフに抱えられていく光景を目にします。これも同じ理由で、レースのゴール直後は、脱水と激しい運動をしていたのが急に止まることで、最も血圧が下がっているのでフラフラになるのです。身近なところでは、スポーツジムに行って運動したあと、ぐったりして血圧を測っている人をよく見かけます。これも運動後低血圧の状態ですので、血圧が下がっているからと安心するのは危険です。最初に述べた「走ってきた」という患者さんもそうですが、自転車をこいできた人など、何らかの運動をして血圧を測った数値は、通常より低いため日頃はもっと高いということです。

したがって、運動後の血圧測定はお勧めできません。測るなら運動前か、運動後30分~1時間経ってからが良いでしょう。

ちなみに、血圧を下げる要因になるものとして、アルコールにも注意が必要です。

以前、私は地方のハーフマラソンに参加するため、新幹線に乗りました。いつもは車で行くのでアルコールは飲めませんが、そのときは安心してゴール直後にビールを飲んでしまいました。その後目の前が真っ白になり、1時間ほどフラフラの状態で立ち上がれなくなったのです。運動に加えてアルコールでさらに血管が拡張し、血圧が下がり過ぎたのが原因でした。

 

運動した後は血圧が上がる?

→ ウソ

習慣にしよう!

  • 運動後は血圧が下がっているので、体の回復を図るためにもしばらく休む時間を設けましょう。
  • 運動後に血圧を測る場合は、運動前か30 分~1時間後にしましょう。
  • アルコールも血管を拡張して血圧を下げるので、運動直後に飲むのは控えましょう。
この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎