院長コラム

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Doctor’s Column

「肉を食べ過ぎると血糖値が上がる」は本当か? 2020/3/28

「肉の食べ過ぎ=糖尿病リスク」といわれるが…

一般に「肉を食べ過ぎると血糖値が上昇して糖尿病のリスクを高めるので、肉を食べ過ぎないようにしたほうがよい」というのはよくいわれることです。

しかし、私はこの説に、ケトン食を実践する前から疑問を感じていました。それは、別のクリニックで「糖尿病だからインスリン治療が必要」と診断された患者さんが、「なんとかしてほしい」と、私のところに駆け込んできたときの症例があったからです。

その患者さんの血糖値は確かに高く、2型糖尿病と思われました。本人はインスリン治療を嫌がっていたため、とりあえず糖質を極力減らすように食事指導をするとともに、DPP‐4阻害剤を処方して経過観察をすることにしました。

すると、月1回の来院のたびに患者さんは痩せてきて、当初はヘモグロビンA1c(ブドウ糖がヘモグロビンと結びついた状態を示す数値:6.5%以上だと糖尿病と診断される)が10%近くもあったのが、半年後には5.5%にまで下がっていたのです。これには私も驚き、一体どんな食事をしていたのか興味津々で訊ねました。それに対して彼は、私のアドバイスにしたがってご飯や麺類などの糖質は食べず、肉ばかりを食べていたといいます。それを聞き、「肉中心の食事にすると本当に痩せるんだ」と軽いショックを受けたものです。

本人に自覚はありませんが、まさにケトン食を摂っていたわけです。結局、その患者さんはインスリン治療の必要はなくなり、太らないようにとアドバイスをして終わりました。そのような経験もあり、私も肉を食べ過ぎても血糖値は上がらないか、試してみることにしました。

肉といえばステーキ。さっそく某ステーキハウスに数日通い、400gのステーキを食べ続けたのです。そして、食後血糖値とケトン体の量を測定したところ、血糖値の上昇は見られず、ケトン体の量も以前であれば治療が必要と思うくらいに上昇していましたが、体調は良く、何もトラブルは生じませんでした。

[図表]血糖値とケトン体値の測定結果

15時40分、朝昼の食事を糖質抜きにして測定した、血糖値とケトン体値。血糖値は空腹にもかかわらず107とやや高め。ケトン体値は2.6mmol/L と最適なケトンゾーンに入っていました。ケトン体のうち7〜8割を占める「β -ヒドロキシ酪酸」を測定しました。
[参考]0.1-0.5:セミケトーシス状態(主なエネルギー源として脂肪が体によって使われる過程が始まった状態)。0.5-3.0:ケトーシス状態(最適なケトンゾーン)。糖質制限を続けていると、0.4 -1.2の範囲に入ることが多いようです。

肉を食べ過ぎても血糖値が上がることはない

つまり、ケトン体が陽性でも、インスリン治療が必要とは限らないわけです。むしろ、肉を食べ過ぎても血糖値が上がることはありません。糖尿病の予防やダイエットに適しているともいえます。また、肉に含まれるタウリンには、血管の収縮を調節したり、膵臓から出るインスリンの分泌を促す働きがある(※)ことも研究によって分かってきました。

さらにいえば、肉でコレステロール値が上がるといわれていますが、この数値も上がっていません。もちろん、ダイエットや健康のためには野菜などとともにバランスよく食べることは必要ですが、肉の食べ過ぎによる血糖値の上昇は心配しなくてよいのです。

 

肉を食べ過ぎると血糖値が上がる?

→ ウソ

 

習慣にしよう!

  •  糖質を中心にした食事は血糖値が上がりやすいので、タンパク質を中心とした食事に変えましょう。血糖値の上昇を抑えられるうえ、ダイエット効果も期待できます。

 

 

※参考文献
公益財団法人 日本食肉消費総合センター『お肉のあれこれミニ事典』

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎