院長コラム

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Doctor’s Column

「糖質の代わりにエネルギー補給できる油がある」は本当か? 2020/3/27

ケトンにおけるメインのエネルギー源は「脂質」

プチ断食で気を良くした私ですが、1週間だから耐えられただけかもしれないと思い、これを長く続けたら体調にどのような変化が出るのか、果たして安全なのかを追究したくなりました。

そこで、ケトン食をさらに続ける実験に移ったのです。今回は期限を設けずに続けるつもりなので無理はせず、夕食だけではなく朝食も昼食も摂る代わりに、ケトン食を徹底しました。肉や魚、卵、大豆食品、野菜などからタンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルといった必要な栄養素を摂るようにしたのです。

ケトン食の場合、メインのエネルギー源は脂質ですが、糖質が体に入ってこないときには脂肪やアミノ酸を材料にして糖エネルギーを作り出す「糖新生」というシステムがあるので、タンパク質が不足すると筋肉のアミノ酸が消費され、筋肉量が減ってしまいます。ですから、タンパク質は特に多く摂るように心がけました。

こうしてケトン食の生活を続けていると、今回はお腹が空いてエネルギー不足ではないかと感じるようになったのです。だからといって、ここで糖質を口にすれば、それが呼び水となって再び体は糖を欲しがり、それでエネルギーを作るようになってしまいます。

では、糖質に代わるエネルギー源として何で補えばよいのか。考えた末に行きついたのが油でした。

油なのに即エネルギーになるMCTオイル

ケトン体は、脂肪からエネルギーを作り出します。

脂質の主な成分である脂肪酸は、分子が鎖のようにつながっており、その長さによって「長鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」「短鎖脂肪酸」の三つに分けられています。私たちが日常的に摂っている食用油の多くは長鎖脂肪酸で、消化・吸収までにはいくつものプロセスを経なければなりません。

これに対して中鎖脂肪酸は、水になじみやすい性質のうえ、早く分解されるので、すぐにエネルギーとして利用できるのです。しかも、血糖値を上げず、油なのに体脂肪として蓄積されにくいので動脈硬化を予防しつつ、ケトン食でお腹が空いたときのエネルギーチャージには実に効果的です。

しかし、中鎖脂肪酸を含む食品は少ないため、食品から抽出したMCTオイルを利用するしか効果的な方法はありません。

そこで、朝や日中の小腹が空いたとき、スプーン1杯のMCTオイルを入れたブラックコーヒーを飲むようにしました。こうするとコーヒーがクリーミーになり、カフェオレみたいになるのです。これならコーヒーをブラックで飲めない人でも、マイルドな口当たりになるので飲めるのではないかと思います。味噌汁に入れたりサラダにかけたりしてもOKです。

使い勝手が良いばかりか即効性があるので、食の細い高齢者でも、汁物に入れればエネルギーを確保でき、体力の低下も防げます。

最近はCMでも紹介されているので、MCTオイルをご存じの人も多いと思います。一般には新しいタイプの油と思われていますが、実は手術後の患者さんなど消化機能の弱っている人の栄養補給として、医療現場では以前から用いられてきたものです。それだけに、安心して使えるオイルともいえます。

おかげで私のケトン食実験も、MCTオイルという強い味方を得たことで空腹感を味わうことなく順調に進みました。ほとんど糖質を摂らない食生活でも、体調を崩すことなく、肥満を予防できています。

 

糖質の代わりにエネルギー補給できる油がある?

→ ホント

 

習慣にしよう!

  • ケトン食ダイエット時のエネルギー補給にはMCTオイルを活用しましょう。MCTオイルなら、摂取後すぐに元気になって眠くならず、食欲をそそらないので過食を防ぐことにもつながります。
  • 脂質はメタボの原因といわれていますが、油によってはメタボ予防に役立ちます。「中鎖脂肪酸」を含む食品に注目してみましょう。
この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎