院長コラム

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Doctor’s Column

「空腹で走ると低血糖になる」は本当か? 2020/3/29

「空腹状態での長時間の運動は危険」といわれているが…

マラソンなど長時間にわたって運動をするときは、食事を摂っておかないと血糖値が下がり過ぎて危険だといわれています。低血糖状態になると、冷や汗や手足の震え、頭痛が起こり、重症の場合は意識障害に陥ります。ですから空腹で走ってはいけないというのが常識です。

マラソン好きの私としては、とても気になるところですから検証するしかありません。そこで、絶食状態でランニングをしてみたのです。

ちょうど東京マラソンに向けて体を絞っておこうと思っていた時期でもあったので、トレーニングのつもりで朝食と昼食を抜き、12時間以上の絶食状態にして8㎞ほど走りました。その際、リブレという持続血糖測定器を上腕(部)に着け、走る前の血糖値を測定したあと、トレッドミルで走り始めて1㎞ごとの血糖値を測りました。

これを12日間続けた結果、絶食状態で走っているにもかかわらず、血糖値は下がり過ぎることがなかったのです。
まず、走り始めると血糖値は上昇し、走っている間はそれをキープしています。そして、走り終わると血糖値が下がると思っていたところ、逆に上がっているのです。しかも、走り終わってから15~20分くらいでピークとなり、その後は少しずつ血糖値が下がっていき、40~50分ほどで元の状態に戻りました。

 

[図表]持続血糖測定器による絶食状態での12回のランニングのデータ

筋肉を鍛えている人・鍛えていない人では結果が違う

絶食をして糖が体内に入ってこなくなると、体内ではグリコーゲンを分解してブドウ糖を作る糖新生が起こり、どんどん糖を作り出します。しかし、走るのを止めた途端に糖が余り、その分で血糖値が上がったのです。その後、糖を作る必要がなくなると、糖新生が減ってきて血糖値も通常の状態に戻ります。つまり、体内のエネルギーのストックにより血糖値が下がることはなく、低血糖にはならないということです。

ただ、これは運動の習慣があり、日頃から筋肉を鍛えている人の話です。体内にエネルギーのストックがあるから可能になったことであり、運動習慣がなく筋肉が衰えている人は低血糖になる可能性が高いのです。

したがって、運動の習慣がない人や高齢者で筋肉量が減っている人は、注意が必要です。

ちなみに、加齢により全身の筋肉量と筋力が自然に低下し、身体能力が低下した状態を「サルコペニア」といい、特に高齢者の身体機能障害や転倒のリスク因子になり得るとされています。ですから元気で長生きするには、走らないにしても筋力は鍛えて筋肉量を減らさないようにすることも必須となります。

 

空腹で走ると低血糖になる?

→ ウソ

習慣にしよう!

  • 何らかの運動習慣をつけていれば筋肉量の低下を防げ、空腹で活動しても血糖値は維持されるようになります。
  • 走ることができなくても、日頃からウォーキングなどの運動に取り組むようにしましょう。

 

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎