院長コラム

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Doctor’s Column

「痩せると酸素摂取量が増える」は本当か? 2020/4/26

持久力の指標になる「酸素摂取量」

私たちは呼吸をすることで体内に酸素を取り入れ、それを利用して糖や脂肪を分解して運動エネルギーを作りだしています。ですから、体内に取り込む酸素量が多いほどエネルギーもたくさん作られ、強度の高い運動をより長く行えるようになります。

体に取り込める最大の酸素量を「最大酸素摂取量」といい、これは1分間に体重1㎏あたりが取り込める酸素量を指し、自分自身の持久力の指標として用いられています。

最大酸素摂取量は、採気用のマスクを着けながらトレッドミルや自転車エルゴメーターで徐々に負荷を上げていき、ある程度の運動強度まで達したとき、それ以上の酸素摂取量の増加が見られなくなった最大の値を測定しています。

この測定は簡単に行えるものではなく、専用の機器や専門の人が付いて行う必要があります。私はスポーツメーカーのラボに通っていたとき、2回ほど測定しました。

その頃はランニングを始めたばかりでしたので、最大酸素摂取量は40㎖/㎏/分といたって標準でした。それが、少し体を鍛えた2回目は、体重70㎏で48㎖/㎏/分とやや上がっていました。

一方、7年経った現在の最大酸素摂取量は56と、かなり上がっています。

ところが、この数字は初期の頃の体重70㎏で入力したデータなのです。すでに気づいた人がいるかもしれませんが、最大酸素摂取量は1分間に体重1㎏あたりが取り込める酸素量です。つまり、肺の大きさは変わっていないので肺機能は同じとすると、体重が変われば数字も変わってくることになります。

例えば、4000㏄の酸素を肺が取り込めるとして、体重100㎏の人の最大酸素量は40になります。それが、痩せて50㎏になると最大酸素摂取量は80になる計算です。

したがって、痩せれば酸素摂取量は増えることになるのです。私の場合も、今は60㎏台ですが、体重がさらに減って50㎏になれば計算上は最大酸素摂取量が78になります。

オリンピックに出場するような選手ともなると、ほとんどが70~80ですから、私も痩せると一流選手並みの酸素摂取量になる可能性があります。したがって痩せれば、単に見かけがスリムになるだけではなく、フィットネスレベルも上がるといえます。

最大酸素摂取量が増えれば心臓の負担も軽減できる

よくアスリートたちが海外で高地トレーニングを行っています。これは、環境への適応能力を活かし、運動能力向上につなげるためのトレーニング方法※です。高地では、酸素濃度が薄いために人間の体は酸素を取り込みにくくなり、血中の酸素濃度は低下します。そうすると、体は環境に適応した酸素供給能力を確保するために、体内で赤血球数やヘモグロビン濃度を増加させるようになるのです。

これにより酸素の運搬能力や筋肉での酸素消費能力が高まり、平地で走ったときにはラクに感じて大きな力を発揮できるようになります。また、筋肉への酸素供給も十分に行われるため、全身持久力とともに筋持久力も向上する効果が期待できるといわれています。

酸素摂取量が増えれば当然、心臓への負担も確実に軽くなります。実際に、メタボ時代はクリニックの地下から3階まで階段を上がるのに息切れをしていたのが、現在は一気に駆け上がることができ、脈も乱れることがなくなったのです。

さらに、痩せると走る速度も圧倒的に上がります。運動量=質量(m)×速度(ⅴ)で求められます。つまり、ⅿ(体重)が小さくなれば、ⅴ(速度)は上がるわけで、重くてスピードが出なかったトラックから、軽くて速いスポーツカーに変身するように、体重を減らせば速く走れるようになるのです。走る習慣がない人でも酸素摂取量が増えれば、日常での身のこなしがラクになることで、転倒やケガをするリスクも軽減でき、寝たきりの予防にもつながります。

 

痩せると酸素摂取量が増える?

→ホント

習慣にしよう!

  • 痩せて酸素摂取量を増やしましょう。持久力が向上してフィットネスレベルが上がるだけではなく、心臓へのダメージも軽減します。
  • 動作が身軽になると、転倒したときでもすぐに地面に手をつけるようになり、ケガの防止にもつながります。

 

※参考文献
浅野勝巳・小林寛道(編) 『高所トレーニングの科学』杏林書院
青木純一郎・川初清典・村岡功(編)『高地トレーニングの実践ガイドライン~競技
種目別・スポーツ医科学的エビデンス~』市村出版

この記事の執筆者 院長 永野 正史

三井記念病院内科腎センター勤務、敬愛病院副院長を経て2003年 練馬桜台クリニック開業。

山田太郎